ピタゴラスイッチの佐藤雅彦展開催|横浜美術館で知的アート体験をしてきた!

投稿日:2025年7月2日 | 最終更新日:2025年7月7日

子どもから大人まで親しまれてきた“ピタゴラスイッチ”や“バザールでござーる”の生みの親、佐藤雅彦さん
その発想の源や思考のプロセス、広告・教育・アートにまたがる多彩な活動を一望できる、世界初の大規模個展が、横浜美術館で開幕しました。

懐かしいCMや教育番組の舞台裏に加え、最新の体験型メディアアートや思考を視覚化した展示まで、見ごたえたっぷり。
ただ“見る”だけでなく、考え、感じ、発見する喜びが詰まった内容で、アート初心者でも思わず夢中になってしまう仕掛けが随所に散りばめられています。

お出かけにもぴったりな内容なので、親子での観覧はもちろん、友人同士やひとりでじっくり楽しむのもおすすめです。
世代や専門を問わず、誰もが楽しめる知的で刺激的な展覧会。開催初日に伺った体験談を元にご紹介します。

見たいところに飛べる目次

横浜市美術館はリニューアルオープンしたばかり

横浜美術館

横浜・みなとみらいに位置する「横浜美術館」は、1989年に開催された「横浜博覧会」のパビリオンとして誕生しました。建築は世界的建築家・丹下健三による設計で、延床面積は26,829㎡。開放感あふれる構造が大きな魅力のひとつです。

2021年からスタートした大規模改修工事を経て、2025年2月に約4年ぶりとなる全館リニューアルオープン。エレベーターの新設やバリアフリー化、子ども連れにも優しい設備が整備され、誰もが心地よく過ごせる、自由で多様性に満ちた美術館へと生まれ変わりました。

横浜美術館内部

「みなとが、ひらく」という新たな理念のもと、美術館はまるで港のように、誰もが立ち寄り、くつろげる場所へ。ピンク色の椅子でひと息つきながら、子どもも大人もアートに触れ合う──そんな温かな光景が、ここ横浜美術館で広がっています。

〜ピタゴラスイッチでおなじみの〜
佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

佐藤雅彦展のポスター

2025年6月28日(土)〜11月3日(月・祝)まで、横浜美術館で特別展「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」が開催中です。

佐藤雅彦さんと聞いて、すぐにピンとこない方も多いかもしれません。でも実は、私たちの日常に深く根ざした数々の名作を手がけてきた、日本を代表するクリエイターです。

たとえば、NHKの教育番組『ピタゴラスイッチ』や『アルゴリズム体操』、さらに「バザールでござーる」や「ポリンキー(三角形のヒミツ)」といった印象的なCM……。子どもから大人まで、誰もが一度は目にしたことのある作品を生み出してきた人物です。

「つくる」と「わかる」を同時に楽しむ展覧会

本展のテーマは「新しい×(作り方+分かり方)」。
日常の中にある“当たり前”を、視点を変えて見せてくれる佐藤さんの発想の原点に触れられる内容となっています。

  • 思わず体を動かしたくなるような参加型の展示
  • 視覚や感覚を使って「考える」ことの面白さに気づける仕掛け
  • 教育・アート・広告というジャンルを横断した創造力の集大成

まさに「見る」「考える」「体験する」を一体化した、新しいアートの楽しみ方が詰まった展覧会。「どうして?」「なるほど!」という感覚を呼び起こす本展は、お出かけや自由研究にもぴったり
大人にとっては、どこか懐かしくて、でも新しい発見がある時間になるはず。

展示のご紹介

展示は無料エリアと有料エリアに分かれています。

佐藤雅彦展の所要時間は?

映像を見たり体験したりするには、ある程度並ばなくてはなりません。並ばずにざっと見ると2時間くらいの所要時間で楽しめる展覧会でした。

計算の森(無料エリア)

計算の森

渡された数字を使って、四則演算のゲートを通り、最終的に「=73」にするというシンプルなパズル遊び。

数字チップにはセンサーが埋め込まれていて、ゲートを通すことで演算が認識される仕組みになっています。見た目は単純ですが、正解にたどり着くにはちょっとしたひらめきが必要。

親子で一緒に考えたり、グループで競い合ったり、子どもから大人まで楽しめる知的な体験型コンテンツです。

第1章 CM・映像の「作り方」

佐藤雅彦さんは、かつて広告代理店・電通に在籍し、CMクリエイターとして活躍していました。
その当時に手がけた数々のユニークなCM作品は、今も多くの人の記憶に残っています。

今回の展示では、そうした佐藤さんの広告制作の仕事に焦点を当てたエリアが、「Theater 1」「Theater 2」というふたつの空間に分かれて構成されています。

Theater 1では、湖池屋の「スコーン」や「ポリンキー」、「バザールでござーる」など、誰もが一度は目にしたことのある懐かしのCMを一挙に上映。
映像を通じて、その時代の空気やユーモア、メッセージ性がダイレクトに伝わってきます。

一方のTheater 2では、それらのCMがどのように作られたのか、音楽や構成、演出といった“トーン”がどのように生まれてきたのかを深掘り。
佐藤雅彦さん独自の思考法やアプローチを、実際の作品と解説を通じて体験的に学べる内容になっています。

さらに、当時のポスターや新聞広告、ノベルティグッズも多数展示され、CMが社会に与えたインパクトや時代背景も感じられる内容となっています。

「勝手に広告」

お菓子の箱

また、展示会場の外側には「勝手に広告」コーナーも設けられています。
これは、実在する企業や商品の広告を、あくまで“勝手に”作ってしまうという、遊び心あふれるプロジェクト。

もともとは雑誌連載から始まり、後に書籍化や展覧会にも発展したこのシリーズでは、佐藤雅彦さんと中村至男さんによるユニークなコラボレーション作品が紹介されています。

ユーモアと鋭い観察眼で作られた広告案の数々は、思わずクスッと笑ってしまうものから、「こんな広告、本当にありそう!」と感じるものまでさまざま。
広告とは何か? 伝えるとはどういうことか? そんな問いも浮かび上がってくる、知的で刺激的な展示です。

第2章トーンへ進化する演出手法

CM作品から生まれる“トーン”─それは、映像の雰囲気やリズム、空気感のような目に見えない要素です。

この展示では、音楽や映像の関係性、演出のタイミングなどが、どうやって人の心に残る“空気”をつくり出しているのかを紹介しています。

シンプルに見えるCMの裏に、実は緻密な設計があることに気づかされる内容です。
「なんとなく好きだったCM」が、なぜそう感じたのか─その理由が見えてくる展示です。

第3章インタラクティブな“分かり方”の体験

ピタゴラスイッチの旗

このコーナーは著作権上、撮影ができませんでした。

会場には、代表作である「ピタゴラ装置」をはじめとした、体験型のメディアアート作品が多数展示されています。
並んでいるのは、実際に使用された本物の装置。日用品や身近な道具を使って構成されたユニークな仕掛けが、目の前にずらりと並ぶ様子は圧巻です。

ピタゴラスイッチでは小物も外国製のビンテージ物などが使用されていてとてもおしゃれ!実はこれらはほぼ佐藤さんの私物だそうです。

ただし、会場ではこれらの装置を直接動かすことはできません。その代わりに、映像を通して実際に装置が作動する様子を見ることができ、仕組みや流れをじっくり観察できる構成となっています。

複雑でありながらどこか親しみのある動きが次々と連鎖し、思わず「なるほど!」と声が出てしまうような仕掛けが満載。
子どもも大人も一緒に楽しみながら、“考える力”を刺激してくれる展示です。

第4章思考の庭—理論 × 体験

展示の最後に広がる「思考の庭」は、まさに佐藤雅彦さんの“頭の中”をのぞき込むようなコーナーです。ここでは、作品を作るうえでの思考の組み立て方や、発想の根本にある哲学的な問いをじっくりと体感することができます。

展示物

たとえば、多くの人に親しまれているNHKの『アルゴリズム体操』が、どのような発想や構造から生まれたのか─その裏側に触れられる映像も紹介されています。

1999年から佐藤雅彦さんは慶應義塾大学で教壇に立っており、『アルゴリズム体操』の原型となる実験を学生たちと行っていた当時の記録映像が流れます。
どのようにしてルールを設計し、動きの意味を作り出していったのか。その思考のプロセスが垣間見える、非常に興味深いシーンです。

可視化した算数

また、小学生の算数の概念を、誰にでもわかりやすく可視化した映像も展示されています。
一見難しそうな内容でも、「あっ、そういうことだったのか!」と直感的に理解できるよう工夫されており、難しいはずの学びが“気持ちのいい体験”として心に残るのが印象的です。

たとえば、水槽の中に異なる水量を入れて混ぜると、その水面が自然に“平均値”の高さを示すことや、ハンマーを投げたときに、その重心だけが美しい放物線を描くといった現象を、視覚的に、しかもとてもシンプルな映像で見せてくれます

単なる知識の詰め込みではなく、体感を通して「分かるって楽しい」と思わせてくれる──それこそが、佐藤雅彦さんの作品の真骨頂なのです。

ギリギリのフォーク

展示全体は「映像で知る→解説で学ぶ→体験で試す→理論で深める」という流れで構成されており、子どもはもちろん、大人にとっても知的好奇心が刺激される内容となっています。

静かに見つめ、考え、ひらめく—そんな時間を過ごせる、知的で心地よい空間です。

まとめ

seeyousomeday
展覧会名佐藤雅彦展新しい×(作り方+分かり方)
場所横浜美術館
住所神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1
開催期間2025 年 6月28日( 土 )~2025 年11月3日( 月・祝 )
休館日木曜日
開館時間10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
チケット【大人】2,000円【 大学生】1,600円 【中高生】1,000円 【小学生以下】無料
日時指定なしで期間中いつでも使える前売り券がおすすめ!
はまる

日によっては入場制限を設けることがあるようなので、事前にチェックしてください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
見たいところに飛べる目次